オファー
めったに鳴らない家の電話が鳴った。
「もしもし? yufuさん? お久しぶりです、ミヤザワです」
かわいらしい女性の声が聞こえてきた。
ミヤザワさん!
わたしが以前CADの講師をしていた会社のデザイナー。講師の仕事を終了したあとは、在宅で図面描きの仕事をもらっていて、いつも彼女が電話をくれた。
『1年をめどに就職します』
と伝えたら、
『わたし、困ります! 絶対1年で戻ってきて下さい!』
と、言ってくれた。けど、退職してもすぐに家で仕事を始められる状況ではなかったので、彼女にはまだ自分から連絡することはできなかったのだ。
ずっと気になっていた…
それなのに、
ミ:「退職したって聞いたので、お仕事していただけないかな〜と思って」
なんと、ありがたい。
在宅でできる仕事があれば、願ったり。
できるものなら、そりゃやりたい。
…でも、今はすぐにうん、と言えない理由があるのよ…。
y:「ちょっと、まだ他の社員さんには言わないで欲しいんですけど、鬱病で会社を辞めたんですよ。まだ精神的にも、生活リズムも安定していないので、すぐにお請けできないんです」
と言ったら、彼女は電話の向こうでため息をついた。
ミ:「やっぱり…。あそこ、・・・なんですよね。実はわたしの専門学校の同級生が、卒業してすぐに入社したんです。だから、内情はよく聞いてました。その頃のメンバー、今はひとりも残ってないでしょ?」
その頃のメンバーがいつの誰だかは知らないけれど、わたしが入ったときのメンバーですら5ヶ月目には総入替でしたよ
…と心の中でつぶやく。
ミ:「広告とかも出してるし、見た目はちゃんとした会社っぽいのに。中は…大変だったんですね」
…![]()
y:「本当は本格的に家でCADの仕事をしたいんですが、病気と症状がちゃんと安定しないうちは、責任を持って仕事をお請けできないんです。パソコンを新調したりソフトも購入したり、設備投資もけっこうしなくちゃいけないし
でも、できるようになったらすぐにご連絡しようって、わたし、仕事のアテにしてるんですよ
」
ミ:「こっちだってyufuさんの復帰、アテにしてますよー! CADがなくてもできるお仕事も、すぐにでもお願いしたいのがあるんです。通信講座の添削とか管理とか。受講者が増えてきているので」
通信講座、わたしが3年くらい前に作った、初心者向けのエクステリア基礎を学ぶ教材だ。
y:「それは在宅でもできますか? 通勤だと、ちょっと遠いので…」
ミ:「週に1回くらいは来てもらう必要があるんですけど、在宅でできると思います」
y:「ありがたいお話、ありがとうございます。一度主治医にも相談してみますから、次の通院のあとにもう一度お電話していいですか?」
ミ:「はい! ご連絡お待ちしています。お大事になさって下さいね」
電話は終わった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
家に帰ってきた夫のtetsuさんに話したら、tetsuさんは賛成だった。
t:「無理しないで家で数時間仕事できて、週に1度くらいのお出かけなら、気分転換にもなっていいんじゃない?」
y:「次の診察の時に、先生に相談してみるね」
t:「扶養を越えない範囲ならさらにいいね」
そうなのだ、会社の扶養手当、これがけっこう重要。
フルタイムで働いて月給を一人前もらうよりも、わたしが望む暮らし。もう、ちゃんと分かっているのだ。それを認めてくれるtetsuさんも、本当にありがたいと思う。
毎日の家事を毎日普通にやり、家で少しの仕事をすること。全くの無収入は、それはそれで心が辛くなるから、扶養の範囲を越えない程度が時間的にも金額的にもちょうどいい。
もう、この方針を曲げないで、望む暮らしを整えていくようにしよう。
焦らずに、着々と。
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